- 番組名:四時四十四分ノラヂヲ
- 放送回:第001回
- 放送日:平成38年10月23日
- 放送開始時刻:午前4時44分
- 放送時間:約20分
- パーソナリティ:yammy
- 記録形式:放送音声の文字起こし
【放送記録】
――みなさんおはようございます。
始まりました『四時四十四分ノラヂヲ』、パーソナリティのyammy《やみー》です。
えー、今回、第一回と言うことで。初めましてですね。
他の番組もやっているので、聞いたことのある方、いらっしゃるかもしれません。
こちらでもどうぞ、よろしくお願いします。
(がさがさとした雑音)
さて。
まずはこの番組の紹介から始めましょうか。タイトルはさっきも言いました『四時四十四分ノラヂヲ』です。
ちょっとね、ノスタルジックな感じで。ラヂヲなんですけど。『ヂ』は『チ』に点々で『ヲ』はわをんの『ヲ』なんですよ。
変わってるでしょ。
時間もね、誰が聞いてるのって思っちゃったんですけど(笑)
まさかの朝四時四十四分です!
不吉―!! って思いません? 俺だけ? あれ?
あ、いや、俺じゃないですよ、時間決めたの。俺は決められたのをそのままやっているだけなので。
で、このラジオなんですけども。
基本的に、俺が経験したり、誰かから聞いた話を紹介するラジオなんですよね。
それが、不思議だったりちょっと怖かったり。時間も時間なんでね、まぁ。
それがまた「好きなだけしゃべっちゃってください!」って言われちゃってて。
うん、うん。そうなの、困るのよ。
でもまぁ、プラスに考えたいと思います!
(軽い咳払い)
では早速、話にいきましょうか。
今回はね、俺が経験した話です。ちょっと、まだ何も募集かけたりしてないからね。まずは俺からってことで。
そんな大した話じゃないけどさ、でも、気になってるのよ、今でも。
最近じゃなくて、ちょっと前の話ね。
えーっと、いつだったかな……多分、十年くらい前だと思うんだけど。
いい? 話しちゃって。話すね。
その十年くらい前に、確か友だちの家の帰りだったと思うんだけど。時間がなくて急いでたのね。
何で急いでたかって、あんまり覚えてないんだけど。
ちょうどいい電車の時間だったような気がするのよ。電車の時間に焦ってて。
あんまり本数多いところじゃなくて、間に合うかも!? みたいなタイミングで家を出たのね。
でさ、すっごい焦ってるじゃん?
その友達の家は、何度か行ったことがあったのよ。一人で行ったことも、送迎してもらったこともあって。
だから、一応道はちゃんとわかってるつもりなわけ。
やっぱ、人と一緒に歩いてると、その人にあわせるんだけどさ。
道は覚えてるのよ、身体が。
だから、迷子になるとかそんな心配はしてなくて。
あれって不思議だよね。知ってる道だとさ、周りちゃんと見てなくても、何となくわかるじゃん?
ちゃんと目的地に着くんだよね。
(軽い咳払い)
でね? まーその日もさ、帰りは一人で帰ったのよ。
「送っていこうか?」って言われた気もするけど、断ったんだよね。
ほら、別に今までも一人で帰ってるし。
駅から三十分ぐらいあったらお願いしたかもしれないけど、十五分くらいだったかな。
住宅街。裏道やら小路が多くてさ。
それで思ったわけよ。
あ、近道したほうがいいかも、って。
だってさ、電車の時間があったからね。こういうの気にするじゃん?
気にしない? 俺は結構気にするのね、時間勿体ないなーって。
……だから、ちょっと道を逸れたの。
いや、わかってる、わかってるのよ。
自分ちの近所じゃなくて、他の場所でやるって結構危ないよなってのは。
いつも歩いてるわけでもないからさ、すぐ道がわからなくなる可能性があるんだよね。
でもさ、何でかわからないけど、そのときは並々ならぬ自信があったわけよ(笑)
これは今でもわかんない。
まぁ、その自信があるものだから、そのまま進んだんだよね。
こっちだ! って思った方向に。
十年前、スマホはもう普及してたけど、あんまり使わなかったんだよね。地図アプリとか。
今なら使う! 絶対!
あ、でね。
周りはマンションと一戸建ての家ばっかり。
道は狭かったと思うよ。車が通るなら一方通行って感じの。
そこを気にせず歩いてたわけ。
そしたらさ。
何か急に周りが気になり始めちゃって。別になんもないのよ。
そこでようやくスマホを取り出したわけ!
もしかして、道間違えちゃったのかも!? って。
こう、何て言うの?
不安? なのかなぁ。あ、だめだわ、みたいな。
で、スマホで道確認して、ふと目線を上げたらさ。
(三秒ほどの沈黙)
目の前壁なの。
はぁ!? ってなっちゃって。
だって、そっちに向かって歩いてたんだよ? 向かってるときは道があったわけよ!
しかも、スマホはその壁の先を示してるの。「まっすぐ進んでください」って。
進めるわけないじゃんね!?
意味わかんないじゃん? 真っ直ぐ行けって言われてるのに、行けないのよ。
もうそこでさ、うわー!! ってなっちゃって。
パニックもパニックよ。横はマンションでしょ? 目の前には壁。
そんなのどうするって、前に進めないから戻るじゃん?
戻れないの。
ちょっと進んだら壁なのよ。
だからさ、俺もうその場でぐるぐる回っちゃって(笑)
どっち行ったらいいのかわかんないんだもん。
目も泳いじゃって、人もいないし。そう、誰もいない。俺だけ。
仕方ないから、隣のマンションを見てみるんだけど、誰もいないのよね。
誰かベランダにいないかな? って思ったのに。誰もいない。
……それで、気付いたわけ。
結構大きいマンションだったんだよ? めちゃくちゃ高いわけじゃなかったけど。
それなのに、どの部屋も真っ暗なの。
カーテン閉めてたのかな。それにしても、暗いのよ。
気味悪くなっちゃってさ。
早く帰りたいのに帰れないし。
そしたらさ、その友達から連絡が来たわけ。
「もう駅着いた? 今日はありがとー」って。
律儀ないいやつなのよ。これね、このメッセージで救われたのよ俺。
「いや、それが道間違えたみたいでまだ帰れてない」って返したのね。
ほっとしたのよ。あ、変な場所に行っちゃったわけじゃないんだって。連絡とれるからね。
でもさ、そこから返事が来ないの!
その間も、俺はずっと同じ道ウロウロしてんのよ!
完全に不審者だよね、でも、そうするしかないじゃん?
戸建てもさ、ちょっと覗いてみたりなんかしちゃうわけよ。あ、よくないよ? そういうの。
分かってるけどさ、こっちは藁にも縋る思いなわけ!
でもさ、気付いちゃったんだよね。
どの家も、駐車場には車が停まってるの。
……停まってるのに、家中の窓のシャッターが下りているのよ。
ああいうシャッターって、旅行行ってるときとか、災害時にすると思ってたの俺は。
家にいるのに閉めるの? 何も起こってないよ? って。
まぁ、実際の用途はよく知らないんだけどさ。そういう人もいるかもしれないし。
でもさ、その道にある家が全部その状態っておかしくない!?
災害来るの!? 俺外にいるんですけど!? みたいな。
そしたら、急に音が遠くなったみたいに、耳鳴りがしちゃって。
嫌だよね、こんなときに限ってさ。
もう嫌んなっちゃって、俺友達に電話したのよ。
電話。メッセージじゃ埒あかないって思って。
でもねー、出て欲しいときに出ないんだよねー。
コール音は鳴ったのよ。鳴ってた、うん、鳴ってたわけ。
だから、圏外だったとか、向こうの電源が切れてたとかはないわけよ。こっちもかけられたんだから、電波はちゃんとあるでしょ?
なのに出ない。
あー、出ないって言うのは語弊があるのかも? 繋がらなかった。
いや、十分でしょ、これ。
何回鳴らしても出ないの!! 何で!? って。
全然わかんない。わかんなかった!
一回切って、また鳴らして、切って、鳴らして。何回繰り返したかな、もう流石に覚えてないや。
覚えてないんだけど、とにかくいっぱいだよね。
いっぱい鳴らしたの。
(溜め息)
なのにね、出ないのよね。
もう俺パニックよ。完全に取り乱しちゃってさ。
超おっきな声で「すみません!! 誰かいませんか!?」って叫んだわけ。
(再び溜め息)
一人くらいさ「どうしましたか?」って、出てきてくれると思うじゃん。そんなでっかい声で叫んだら。
不審者か? とか、何か事件か? って。最悪悪戯と思われてもいい!! って思ったのにね。
だーれも出てこないの。
俺の声だけあたりに響いて、シーンって。
あれ、ホントにシーンってなるんだね! 俺びっくりしたわ。あの効果音大正解。
その瞬間、全身から血の気が引くって言うの? 急に寒くなってさ。手も震えだして。
汗もかいてたかもね、冷や汗ってやつ。耳の奥が冷たい気がして、とにかくうわぁぁぁぁぁ!! って。
もうね、完全に不審者! 自信ある俺。あのときの俺、完全に不審者だったわ。
思われてもいいって言うか、もう不審者です。はい。
それでも誰も出てこないんだよ?
どうしていいかわかんないじゃんだって。
仕方なく、戸建ての家を一軒一軒インターフォン鳴らして歩いたわけ。
さて問題です! 何人の人が出て来たでしょうか!
十、九、八、七、六、五……四、三、二、一……ゼロ!
答えはゼロ人でした!
……わかるよね、なんかね。うん。
んでさ、もう一回地図アプリ開いて、壁の先に行けって指令を読むわけよ。
いや、指令は大袈裟だけどさ。俺には似たようなもんで。
どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようって。
いや、ホント、ホントだからね!? ブツブツも言いたくなるでしょ。
その場でずーっとグルグル回ってたの。
あっちでもないこっちでもないって。
(軽い咳払い)
一瞬、警察に電話するか悩んだよね。
でもどう考えても警察案件じゃなくない?
「すみません、突然道に壁が生えてきて前に進めません」って、無理じゃん!
夢でも見てるのかって思ったよ。
まださ、あたりが暗かったら、諦めつくじゃん?
「あー、ついに異世界に行ったか?」とか「神隠しにでもあったか?」って。
リアルでさ、それに、ついさっきまで起きてたのに、道端で寝ることある? ないよね?
(溜め息)
何回考えても現実なんだよね。
グルグル回って「頑張ればこの壁上れるのか? それとも、片っ端からマンションのインターフォン鳴らすか?」って思った。
戸建ては出なかったじゃん?
いやもう、これで誰か出てきても、俺は人間だとは思えない!
言い過ぎ? でも、普通の人じゃないよね、きっと。
まぁ、そんなことも考えて。
一回さ、行けるところまで行ってみようと思って、来た道を戻ったの。
どんどんどんどんどんどんどんどん。
……どうなったと思う?
同じマンションと戸建てが、ずーっと並んでるの、ずーっと。
むしろ「壁のほうが正常じゃない!?」みたいな。
壁のほうに戻ったよね。
壁に背中向けて、また地図アプリ開いて、やっぱり駅に向かうには、この壁を通り抜けるか越えるしかなくて。
でっかい溜め息ついて振り返ったらさ。
壁が消えてたの。
は? って。
そんなことある?
急に壁って出てきて消えていくものなの!?
それもおかしな話だけど、この壁またいつ出てくるかわからないじゃん?
だからさ、俺、もう今世紀最大のダッシュ見せたよね。
めちゃくちゃ走った。
振り返る勇気はなかったよ。
来た道戻る勇気も。
何でかはわかんないけど、今度はちゃんと地図アプリのナビどおり進めたのよ。
こう、耳鳴りもなくなったし、張り詰めてた空気みたいなのも、ふわっと軽くなった気がして。
「あ、戻って来た」って。
どこからかはよくわかんないよ? 分かんないけど、そんな気がしたの。
急いで友達に電話してさ。
今度はちゃんと繋がって、最初の三コールくらいで「お、yammyどした?」って。
どーしたじゃないのよ! もうそれがなんか面白くて、気が抜けて。
駅着くまで電話繋いだままにしてもらって、無事に帰ったよ、その日は。
その友達の家には今でも行くけど、二度と近道しようとは思わないね。
またあの変な道に入ったら、今度は出られるかもわからないから。
これが俺の、十年くらい前に経験した話です。
未だにわかんない!
何が起きたのか、あそこがどこだったのか。
それとなく友達にも聞いてみたけど、そいつはそういうこと起こったことないって。
「変な夢見たんじゃねーの?」って、すっげー笑われたんだけど。笑い事じゃないんだよこっちは。
とにかく、皆さんも近道には気をつけてください。
『急がば回れ』って言うしね。
あー、でも、時間は経ってなかったんだよなぁ。
結果、短縮はできなかったけど、なぜかロスも起こらなかった。
……時間が止まってたって言うこと?
わかんない。全然わかんない。
(がさがさとした雑音)
おっと、そろそろ今日はお時間と言うことで。
ひとつお話しできましたからね、次は別の話をしましょう。
『四時四十四分ノラヂヲ』、パーソナリティのyammyでした。
皆様、今日も良い一日を。
【放送記録終了】