にじのむこうには何があるの?|夕凪県不思議相談所

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相談者:宵闇市在住・小学3年生

ご相談内容

ののちゃん先生、こんにちは。

このまえ、学校から帰るときに、空に大きなにじが出ていました。

友だちといっしょに見ていたら、にじのはじっこが山のむこうにあるように見えました。

友だちは、にじの下にはたからものがあるんだよ、と言っていました。
でも、べつの友だちは、にじの下には行けないんだよ、と言っていました。

わたしは、行けるなら行ってみたいです。

にじの下には、本当にたからものがあるんですか?

それから、にじはどうして七色なんですか? 雨がふったあとに出るのは、どうしてですか?

お父さんに聞いたら、光のせいだよ、と言われました。でも、よくわかりませんでした。

ののちゃん先生なら、知っているかなと思って、お手紙を書きました。

よろしくおねがいします。


皆槻野々子先生からのお返事

こんにちは。
お手紙をありがとうございます。

学校からの帰り道に、大きな虹を見つけたのですね。

お友達と一緒に空を見上げながら、虹の向こうには何があるのだろうと考えている様子が目に浮かびます。
虹を見つけると、なんだか嬉しくなりますよね。私も虹が好きで、雨上がりには、つい空を見上げてしまいます。

さて、今回のお手紙には、いくつかの質問がありましたね。

一つずつ、一緒に考えてみましょう。

虹の下には行けるのでしょうか?

最初の質問は、虹の下には行けるのか、というものでした。

実は、残念ながら、虹の下まで歩いて行くことはできません。
虹は、山や建物のように、決まった場所にあるものではないからです。

少し不思議に感じるかもしれませんね。

例えば、あなたがお友達と並んで虹を見ていたとしましょう。
二人には同じ虹が見えているように思えますが、実際には、二人の目に届いている光は少しずつ違います。

虹がどこに見えるかは、見ている人の立つ場所によって変わるのです。
そのため、虹の端が山の向こうにあるように見えても、山まで歩いていけば、そこからまた別の場所に虹が見えることがあります。

虹を追いかけても追いかけても、なかなか近づけないのは、このためです。
まるで、鬼ごっこをしているみたいですね。

けれど、虹はあなたから逃げているわけではありません。
あなたが歩いて場所を変えると、虹の見え方も変わっているのです。

虹はどうして七色なのでしょう?

お父さんがおっしゃった「光のせい」という説明は、正しいですよ。

ただ、それだけでは少し難しいですよね。
私たちが普段見ている太陽の光は、白っぽく見えています。

ところが、この光の中には、いろいろな色の光が混ざっています。
赤、オレンジ、黄色、緑、青、藍色、紫。
虹を見ると、こうした色が並んでいることがありますね。

では、普段は白っぽい太陽の光が、どうして虹になるのでしょうか。

ここで大切なのが、雨の粒です。
空に浮かんでいる小さな水の粒に太陽の光が入ると、光は進む向きを変えます。
このとき、色によって光の曲がり方が少しずつ違うため、混ざっていた色が分かれます。
さらに、水の粒の中で光が反射し、外に出るときにも曲がることで、私たちの目に色の違う光が届きます。

これが、虹ができる仕組みです。
難しい言葉では「屈折(くっせつ)」や「分散(ぶんさん)」といいます。

今は覚えなくても大丈夫です。
まずは、太陽の光と小さな水の粒が出会うと、虹が見えることがあるのだと知っておいてください。

ちなみに、虹は必ず七つの色にはっきり分かれているわけではありません。
隣り合った色が少しずつ変わっていくため、どこからどこまでをひとつの色と数えるのかは、人によって違うことがあります。

国や地域によっても、虹の色の数え方が異なるのですよ。
同じ虹を見ていても、みんなが同じ数の色を見つけるとは限らないのです。

こういうところも、虹の面白いところですね。

雨が降ったあとに虹が見えるのはなぜ?

こちらは、先ほどのお話を思い出してみましょう。

虹が見えるためには、太陽の光と、空にある小さな水の粒が必要でしたね。
雨が降ったあとには、空気中に雨粒が残っていることがあります。
そこに太陽の光が差し込むと、虹が見える場合があるのです。

ただし、雨が降れば必ず虹が出るわけではありません。
太陽の位置や、雨粒のある場所など、いくつかの条件がそろわなければならないからです。

普通の虹を探すときには、太陽を背中にして、反対側の空を見ると見つけやすくなります。
朝なら西の空、夕方なら東の空に虹が見えることがありますよ。

もし今度、雨がやんだあとに太陽が顔を出したら、空を探してみてください。
もちろん、道路を歩いているときや車が通る場所では、周りの安全を確かめてくださいね。

虹を探すために遠くまで出かける必要はありません。
いつもの帰り道からでも、素敵な虹に出会えるかもしれませんから。

虹の下には、本当に宝物があるのでしょうか?

さて、ここからは、私が専門にしている民俗学のお話です。

民俗学というのは、昔から人々の間で伝えられてきたお話や、暮らしの中の決まりごと、行事や習慣などを調べる学問です。

虹についても、世界にはさまざまなお話が残されています。
例えば、アイルランドには、虹の端に金貨の入った壺があるという言い伝えがあります。
このお話には、レプラコーンと呼ばれる小さな妖精が登場することもあります。

お友達が話していた「虹の下には宝物がある」というのも、こうした昔話から広まった考え方かもしれませんね。

ほかにも、虹を天と地をつなぐ橋のように考えたり、特別な生き物と結びつけたりする文化があります。
日本でも、古くから虹を不思議なものとして捉える考え方がありました。

今では、虹を見ると「きれいだな」「幸運なことがありそうだな」と感じる人も多いでしょう。
けれど、昔の人がみんな、虹を良いものとして考えていたわけではありません。
自然の中で突然現れる大きな光の帯を見て、何か特別な出来事の知らせではないかと考えることもあったのです。

同じ虹なのに、ある場所では美しい橋、別の場所では不思議な生き物、また別の場所では何かの知らせと考えられる。

面白いと思いませんか?
私たちが暮らしている場所や、昔から聞いてきたお話によって、同じものでも違った意味を持つのです。

私は、こうした違いを調べることが大好きです。

それでは、虹の向こうには何があるのでしょう?

最初のお手紙に戻りましょう。

あなたは、虹の向こうに何があるのかを知りたいと書いてくれましたね。
科学的に考えると、虹の向こうに特別な場所があるわけではありません。
虹が見えている先には、山や町、森や海など、いつもの景色が広がっています。

でも、私は、それだけではないとも思うのです。

虹を見つけて、お友達と一緒に眺めたこと。
その向こうには何があるのだろうと、不思議に思ったこと。
お父さんに聞いて、もっと知りたくなったこと。
そして、こうして私にお手紙を書いてくれたこと。

その全部が、虹を見つけなければ生まれなかった出来事です。

昔の人たちも、きっと同じように空を見上げていたのでしょう。

どうして空に色がつくのだろう。
あの光は、どこから来たのだろう。
虹を渡ったら、どこへ行けるのだろう。

そうして考えたことが、たくさんのお話や言い伝えになって、今も私たちのところに残っているのかもしれません。

科学が発達したおかげで、私たちは虹のできる仕組みを知ることができました。

けれど、仕組みがわかったからといって、虹が美しくなくなるわけではありませんよね。
私は、理由を知ることで、もっと好きになるものもあると思っています。
そして、あなたが今回見つけた虹も、あなたにとって特別な虹だったのではないでしょうか。

残念ながら、虹の端にある金貨の壺を見つける方法は、私にもわかりません。
でも、もし見つけられたら、ぜひ教えてくださいね。
研究者として、とても興味があります。

最後に、ひとつだけお願いがあります。
また虹を見つけたら、今度は何色に見えたか、数えてみてください。
七色ではないかもしれませんし、途中で色がわからなくなるかもしれません。

それでも構いません。
あなた自身が何を見つけたのか。
それが大切なのです。

そして、もしよければ、お友達にも聞いてみてください。
みんな、同じ数の色を見つけられるでしょうか。
その違いを比べるのも、立派な小さな研究です。

素敵なお手紙をありがとうございました。

これからも、身近にある「どうして?」を大切にしてくださいね。
また不思議なことを見つけたら、いつでもお手紙を送ってください。

皆槻野々子

夕凪大学 人文学部 民俗文化学科


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