裏ガイドからの注意事項
― 巻末付録をお読みになる前に ―
……さて。
ここまでお読みいただいた皆さま、まずはお疲れさまでした。
宵闇市まるわかりガイド創刊号、いかがでしたでしょうか。
観光名所、飲食店、宿泊施設、市民生活に関する情報まで、なかなか丁寧にまとめられていたのではないかと思います。
ええ、これは嫌味ではありません。
実際、よくできたガイドです。
初めて宵闇市を訪れる方なら、あの一冊を参考にするだけでも、十分に観光を楽しめるでしょう。
――ただし。
ここから先をお読みになる方には、いくつかお伝えしておきたいことがあります。
難しい話ではありません。
ほんの少し、資料の扱い方に気をつけていただきたいだけです。
Ⅰ.本編の内容を疑う必要はありません
最初に申し上げておきます。
この付録は、本編の内容が間違っていると主張するために用意されたものではありません。
掲載されている施設も、観光地も、行政サービスも、それぞれ確認された情報に基づいて紹介されています。
少なくとも、あちらの編集方針はそうなっています。
ですから、何かを訂正するために、最初から読み直す必要はありません。
ただ、ひとつだけ。
同じ場所について調べた人間が、必ず同じ資料を手にするとは限りません。
同じ建物の記録でも、保存していた場所によって内容が違うことがあります。
同じ出来事について聞き取りをしても、話してくださる方によって説明が異なることがあります。
珍しいことではありませんね。
記憶違い。
記録の転記ミス。
古い資料が更新されていなかった。
あるいは、質問の仕方が違っただけかもしれません。
そうした違いを、すべて間違いとして処理してしまうのは、少々もったいない。
私たちは、そう考えています。
Ⅱ.記載されていないことにも、理由はあります
観光ガイドには、掲載されていない場所があります。
これは当然です。
すべての店舗、すべての施設、すべての道路を掲載しようとすれば、どれほどのページ数が必要になるでしょうか。
それに、観光客の方へ積極的におすすめできない場所まで掲載する必要はありません。
一般公開されていない建物。
私有地の奥にある施設。
すでに営業を終了した店舗。
場所が特定できない古い資料。
そうした情報が掲載されていなくても、何も不思議ではありません。
ただ、掲載されていないことと、存在しなかったことは別です。
この違いについては、覚えておいていただけると助かります。
……いえ、覚えていなくても構いません。
特に困ることはないでしょうから。
Ⅲ.複数の記録がある場合について
少し、面倒な話をします。
ある場所について、三つの記録が残っていたとしましょう。
一つ目には、建物が取り壊されたと書かれている。
二つ目には、建物を改装して利用していると書かれている。
三つ目には、そもそもその住所に建物が存在しないと書かれている。
この場合、どれが正しいのでしょうか。
普通は、記録の作成日を確認しますね。
それから、発行元や記録方法、記載されている住所などを照合する。
大変結構です。
できる限り、そうしてください。
ただし、作成日が同じだった場合はどうでしょう。
同じ発行元の資料だったら?
さらに、すべての資料に同じ訂正印が押されていたら?
……困りますね。
私たちも困りました。
ですから、この付録では、判断できなかった情報を無理にひとつにまとめていません。
読者の皆さまには、少々読みにくい部分があるかもしれませんが、ご理解いただければ幸いです。
Ⅳ.現地で確認する必要はありません
これはお願いです。
この付録に記載されている場所について、実際に足を運んで確認する必要はありません。
現地調査そのものを否定するつもりはありませんが、現在の利用状況がわからない施設や、私有地にあたる場所もあります。
また、古い住所表記や通称が使われている場合、現在の地図では正確な位置を確認できないことがあります。
現地の住民の方に、突然話を聞くこともおすすめしません。
知らない方から質問を受ければ、驚く方もいらっしゃるでしょう。
過去の出来事について、あまり話したくない方もいるかもしれません。
どうしても確認したいことがある場合は、公開されている資料などを利用してください。
それで十分です。
本当に。
十分ですから。
Ⅴ.本編へ戻って確認するときは
この付録を読み進めるうちに、本編の記述を確認したくなることがあるかもしれません。
その場合は、もちろん戻っていただいて構いません。
ただし、できれば該当するページの見出しだけでなく、その前後の文章にも目を通してください。
文章というものは、途中だけ抜き出すと意味が変わることがあります。
例えば「現在は営業していません」という記述と「現在は営業していないとされています」という記述は、よく似ていますが、同じではありません。
「確認できませんでした」と「確認されていません」も、厳密には違います。
面倒でしょう?
私もそう思います。
ですが、そうした細かな違いを無視してしまうと、後から確認するときに余計な手間が増えるのです。
特に、誰かから聞いた話を記録に残す場合は。
Ⅵ.資料に手を加えないでください
付録に収録された文章には、表記の揺れや不自然な空白が残っている場合があります。
誤字のように見える箇所もあるでしょう。
もちろん、単純な入力ミスである可能性はあります。
ただし、こちらで確認できる範囲では、元の記録に近い形を残す方針としています。
読みやすさのために句読点を補った箇所はありますが、意味が変わるような修正は避けています。
ですから、読者の皆さまも、資料を引用する際には注意してください。
同じ言葉が二度書かれていても、一度にまとめない。
空白があっても、勝手に文字を補わない。
数字が抜けていても、前後から推測して埋めない。
そのようにお願いできればと思います。
特に、ページ番号については。
……いえ。
ページ番号の話は、次の資料で扱うことになっています。
ここでは触れない方がよいでしょう。
Ⅶ.最後に、もうひとつだけ
ここまで、細かなお願いばかりになってしまいました。
少々堅苦しく感じられたかもしれませんね。
ご安心ください。
この付録を読んだからといって、何かをしなければならないわけではありません。
誰かに連絡する必要もありませんし、現地へ行く必要もありません。
特定の文章を覚えておく必要もありません。
どの本とも同じように、読み終えた資料を、読み終えたものとして扱っていただければ結構です。
それ以上のことは、こちらからお願いしません。
では、注意事項は以上です。
続いて、本文の編集過程で確認された欠番と、削除された章についての資料をご覧ください。
こちらも、特別なものではありません。
編集をしていれば、ページが増えたり減ったりすることはよくあります。
ただ、今回は少しだけ、説明のつかない部分が残りました。
それだけの話です。
……それだけ、ということにしておきましょう。
宵闇市まるわかりガイド|創刊号・巻末付録